Motor cortex can directly drive the globus pallidus neurons in a projection neuron type-dependent manner in the rat. Karube, F., Takahashi, S., Kobayashi, K., and Fujiyama, F. (2019) eLife 8:e49511 doi: 10.7554/eLife.49511.
要約: 大脳基底核は、適切な運動の企画や制御に重要で、また、様々な運動関連疾患に関わっています。研究グループは、大脳皮質運動野から大脳基底核への新しい投射経路を見出し、またこの経路が、既知の皮質投射経路と同程度に働き得ることを報告しました。さらに、この投射が特定の神経回路を選択的に動かすことを示唆するデータを報告しました。これらの結果は、運動関連疾患のメカニズムの理解にもつながると考えられます。
私は神経内科専門医としてパーキンソン病やハンチントン舞踏病の患者さんを担当していた頃、一見説明のつかない症状に困惑していました。動きたいのに動けない。動きたくないのに動いてしまう。この謎に満ちた症状を引き起こしているのが大脳基底核という脳領域です。さらに近年、大脳基底核は運動調節だけでなく、「学習にもとづいた行動選択」という重要な役割を担うことも分かってきました。しかしながら、運動と学習、この二つを実現する神経回路(ニューロサーキット)がどのようなものなのかは分かっていません。私はこの謎に迫るために基礎医学に移り、新しい電子顕微鏡技術や分子遺伝学を応用することで大脳基底核回路の解明に取り組んできました。
現実には神経変性疾患の多くが、「どのニューロサーキットがどのように変化しているのか?そもそも本来あるべきニューロサーキットはどのようなものか?」が不明なままです。脳科学研究科では脳領域や疾患の枠組みを超えて、ニューロサーキットの原理を追求し、臨床にも貢献したいと考えています。本研究科の各分野のエキスパートの先生方とご一緒させていただくことによる新しい展開も楽しみです。
また、研究の面白さ、本当のことを知るときめきを若い人たちと共有していきたいと思っています。
脳科学は多様な視点を要求される学問ですので、女子学生にも参加してほしいですね。研究を続ける上での悩みや困難を共有し、一緒に乗り越えていく研究室を作りたいと思っています。